A編(P.2〜P.22)
工業簿記
工業簿記とは、工企業(製造業など)に適用される簿記をいう。
製品を製造し、さらにそれを販売して利益を獲得することを目的とした企業である。
原価計算
工企業の製品の減価は、自ら計算しなければならず、容易に知ることは出来ない。
原価
原価は、【製造原価】を意味する場合と、製造原価に【販売費】および【一般管理費】を加えた総原価を意味する場合がある。
総原価
【製造原価】…(工場)
【販売費】…(CM、営業マン、営業所etc)
【一般管理費】…(本社)
上記以外の費用を【非原価項目】という。
製造原価の分類
1:形態別分類
【材料費】…物品の消費高
【労務費】(人件費)…労働力の消費高
【経費】…物品や労働力以外
2:製品との関連における分類
製造原価は、特定の製品に対して直接認識されるか否かにより、【製造直接費】と【製造間接費】に分類される。
【製造直接費】…特定の製品に対して直接に認識・計算される製造原価
直接材料費、直接労務費、直接経費
【製造間接費】…特定の製品に対して直接に認識・計算されなかった製造原価
間接材料費、間接労務費、間接経費
原価計算の手続
【費目別計算】…一定期間における原価要素を項目別に分類測定する手続
【部門別計算】(場所)…費目別計算において把握された原価要素を部門別に分類測定する手続
【製品別計算】…原価要素を一定の製品単位に集計し、製品の単位原価を計算する手続
製品別計算の方法
1:個別原価計算
個別原価計算は、顧客の注文に応じて特定の製品を製造する個別受注生産形態に適用される原価計算
2:総合原価計算
総合原価計算は、同じ規格の製品を大量に製造する大量見込生産形態に適用される原価計算
原価計算期間
原価計算を行うためには、この会計期間とは別に【原価計算期間】(通常暦の1ヶ月)を設ける必要がある。
個別原価計算の記帳体系
【材料勘定】(資産)
【賃金給料勘定】(費用)
【経費勘定】(費用)
【製造間接費勘定】(費用)
【仕掛品勘定】(資産)
【製品勘定】(資産)
【売上原価勘定】(費用)
工業簿記では、製品を販売した際、売上高に関する仕訳とその売上原価に関する仕訳を同時に行う。←【両建法】
(売 掛 金)××× (売 上)×××
(売 上 原 価)××× (製 品)×××
完成した製品を即時に顧客に引渡す場合には、製品勘定を設けず、仕掛品勘定を用いる。
(売 掛 金)××× (売 上)×××
(売 上 原 価)××× (仕掛品)×××
工業簿記の決算
1:月次決算
(月次損益)××× (売上 原価)×××
(販 売 費)×××
(一般管理費)×××
(売 上)××× (月次 損益)×××
(月次損益)××× (年次損益)××× ←営業利益
材料と材料費
材料とは、製品の製造のために消費される物品をいう。
【庫出された時点をもって消費とみなす】
材料費の分類
1:直接材料費
【素材費】(原料費)…木材、原油など
【買入部品費】…タイヤなど
2:間接材料費
【燃料費】…重油、コークスなど
【工場消耗品費】…機械油、屑布、軍手、作業服、ロープ、電球、石鹸、掃除用具など
【消耗工具器具備品費】…ドライバーなどの工具、各種器具、机、椅子、戸棚、黒板、自転車などの備品
なお、直接材料費および間接材料費は、その目的に応じて【主要材料費】(直接材料費)、【補助材料費】および【工場消耗品費】など(間接材料費)に分類する場合もある。
材料の購入原価の計算と記帳
材料の購入原価は、【購入代価】(購入した材料そのものの金額)に引取運賃などの【付随費用】を含めて計算する。
【購入原価=購入代価+付随費用】
<参考>
材料副費
付随費用【(材料副費)】には、材料が仕入先から納入されるまでにかかる買入手数料や引取運賃などの【外部材料副費】のほかに、材料の発注手続、倉庫への搬入・保管、作業現場に庫出されるまでにかかる購入事務費、検収費や保管費などの【内部材料副費】も含まれる。
また、重要性の乏しい工場消耗品などは購入額を消費額とみなし、購入と堂おじに消費の処理を行う場合がある。
材料費の計算と記帳
材料費は、【直接材料費】と【間接材料費】に分類され、実際消費量に消費価格(払出単価)を乗じて計算する。
【材料費=実際消費量×消費価格】
1:実際消費量の計算
1-1:継続記録法
継続記録法とは、材料の購入、出庫のつど、材料元帳にその数量を継続的に記録し、常に帳簿棚卸量を明らかにする方法。
【庫出票に記入された消費量が実際消費量】
なお、庫出票に製造指図書番号が記載されているかどうかによって、【直接材料費と間接材料費に区別】することができる。←棚卸減耗を把握することができる。
1-2:棚卸計算
棚卸計算とは、材料の受入量のみを材料元帳に記録し、月末の実地棚卸によって実際消費量を計算する方法。
【実際消費量=月初棚卸量+当期購入量−月末実地棚卸量】
また、この方法では、実際消費量は推定で計算されるため、【すべて間接材料費】となる。
2:実際消費価格の計算
2-1:【先入先出法】…先に購入した材料を、先に払出したものと仮定して計算する。
2-2:【平均法】…材料の平均単価を計算する方法。
【総平均法】…”一定期間”の材料の平均単価を計算する。
材料の棚卸減耗の計算と記帳
棚卸減耗とは、材料の保管中になんらかの原因によって数量が減少することをいい、その損失を棚卸減耗費という。
また、棚卸減耗が材料の【保管中に不可避的に発生】した場合は、製造間接費として処理する。
なお、月末実地棚卸高は材料勘定の【次月繰越】の金額となる。